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『アジアのハかしたTシャツ』

アジアのいかしたTシャツ


sunao 『アジアのいかしたTシャツ』 (ぺんぎん書房 2004/11)
10年前からサイトが公開され、書籍としても4年以上前に出版されているので、知ってる人には「なにをいまさら」だとは思いますが、最近、偶然、見つけてしまったもので・・・。

かつて雑誌で、街角で見つけた笑える標語・標識という投稿ものが人気を博していましたが、それのTシャツ版【のようなもの】です。 アジアのマーケットで売られている衣料品のデザインとして、日本語の文字(カタカナ、ひらがな、漢字)と時にはアニメキャラクター(のパクリ)が使われているのだけどそれが全然「文脈なし」な使われ方をしている という現象を追ったもの。
それだけのこと なのですが、なぜか久々に爆笑を誘われました。 ここ2年ほどは、サイトも更新されていないようです。 アジア市場のクールダウンや世界的な不景気も関係しているのでしょうか。 下手なブランドコピー商品より、ずっと「いかして」ると思うのですが・・・。

たぶん、笑わせようという意図を全く持たずに、真面目に製作しているところがよいのだと思います。 よく子供と動物には敵わない といいますが、彼らも同類です。 販売している方々にこれらのコピーの意味を問われたので筆者が教えてあげたら「意外なかっこ悪さに嘆いていた」という話しそのものに笑ってしまいます。
格好いいと思って欧米語を印刷した商品を身につけていると、思わずこういう陥穽にはまってしまいそうです。 ロシア語、アラビア語、ミャンマー語、などは、絵面としてなかなかに格好よいので気をつけたいものです。 

本書では、「アジアのいかしたTシャツ」(以下、「アジいか」)の面白さが4種類に分類されまていす。

1 言葉科;つぶやき属、叫び属、途中属、ひと言属など
 例;
  ボーダー柄のシャツの胸に白文字で、『ぼく、このままでいい?』(つぶやき属)
  縦書きで、『園の役員って、』(途中属 読点で終わる)
  白いTシャツの胸に、『各カテゴリ』(ひと言属)

2 キャラクター科;ドラえもん属 たれぱんだ属など
 例;
  赤もしくは青のTシャツ 右手を突き出したイラストに『スハイドマン』(スパイダーマン属)
  ねころんだたれぱんだ5頭に『たれぱたん』(たれぱんだ属)
  ポパイのイラストに添えて『クレヨンしんちゃん』

 但し、これらはキャラクターパクリと紙一重で、ずらしにも戦略的なものがあり、素直に笑えないものがあります。

3 名称科;食料属、団体属など
 例;
  青いタンクトップに赤い文字で『原宿廃品回収隊』(団体属)

 中途半端な固有名詞が唐突に表れる意外性に打たれます。
  (「鷲のマークの○○製薬」とか。意外とかっこいいぞ 鷲のマーク)
 中には、どこかのフリマで仕入れたかと思われるようなものも出現します。 
  (「○×中学 卓球部」とか)

4 超越科 日本語不成立属 長文属など
 例;
  『力語の実英』(日本語不成立属)
  『どくそうこきな』(日本語不成立属)
  (へなへなの手書き文字で)『適当』(へた文字属)

 漢字やひらがなやカタカタを意味ではなく「絵柄」として扱った結果、もとの言葉とはてしなく乖離してしまい、その距離に愕然とし、笑ってしまうもの。
 その乖離の様態を筆者は、遺伝子の変異にたとえ、「切断、欠失、逆位、転座、重複」などと分類します。

超越科は「アジいか」の本領と言えるでしょう。 日本国内で見つける「ちょっと笑える標識・標語」というのは、何か特定の意味を伝えようとしてその意味がズレてしまうおかしさに笑ってしまうのだと思います。 それに対し、「アジいか」超越科には、表現する者がなにも伝えようとしていない、それは「無」意味な表現なのだと知りつつ、なまじっか「日本語の文字」の体をなしているがゆえに、そこからついついなにかを読み取ろうとしてしまう自虐的なおかしみと哀しさを感じてしまいます。 
アジアの創造力にリスペクト です。 



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